村上世彰「生涯投資家」に読むファンドへ譲渡する意義

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村上世彰氏曰く「コーポレートガバナンスのために戦った」

今から3〜4年前まではM&Aと言うと、「村上ファンドのことか」「ハゲタカファンドだ」と言ったネガティブな印象が多く聞かれました。現在では好景気であることと、そして日本の投資ファンドの成果が世の中に広まってきたこともあり、以前よりも投資ファンドに対する抵抗感が減ってきました。

例えば上場企業のコメダ珈琲は、事業承継の一貫としてフェニックス・キャピタルに株式譲渡を行い、その後フェニックス・・キャピタルがファンドの償還期限を迎えたためにMBKパートナーズに譲渡。MBKパートナーズコメダ珈琲を上場にまで導きました。他にもスシローホールディングスやマクロミルなど、ファンドが買収した後に再度上場させる事例が上手く上場まで辿り着いています。

ファンドに関連する情報といえば、昨年発売された村上世彰氏の「生涯投資家」が大きなインパクトを与えました。本書では「上場企業は上場しているのだからガバナンスを強化し、資金を有効に活用し、株主価値を向上させていくべきだ」という点が何度も繰り返されています。確かに上場企業は上場しているのですから、誰かに株を買われるリスクを背負う一方で、資金調達が容易になったり、優秀な人材を採用しやすくなったりといったメリットがあります。

そのため現金を多額に持っており、借金をしておらず、成長もあまり見込めない上場企業は、村上ファンドからすると最適な投資先だったといえるのです。それを彼は「コーポレートガバナンスのために戦った」と表現しています。

 

投資ファンドに譲渡すれば「色」が着かない

では未上場が投資ファンドに売却する意義とはどのようなメリットがあるのでしょうか。

1点目はコメダ珈琲が譲渡した理由にも上がりましたが、多店舗展開をしていく上でのノウハウ提供や優秀な経営人材の提供、マーケティングの強化など、目に見えない資産の提供です。これは、事業会社に売却した際にも得られることもありますが、投資ファンドは事業会社以上に価値を向上させることに重きをおいております。そのため、短期的だけでなく中長期的に会社の足腰を鍛えることができます。

2点目はコストカットや人事評価の見直しなど、会社内部のムリやムダを排除できる点にあります。ある有名な投資ファンドが述べているように、多くの企業ではムダなコスト、ムリな仕事を行っていることがほとんどです。そのため、投資ファンドのように第三者の目線から会社のムリ・ムダを省くことで、利益体質に持っていくことが可能です。M&Aが非常に得意な日本電産もこの点を重視してM&Aを行っていると言われています。

最後に意外にスポットライトが当たらない点なのですが、投資ファンドに売却することで「色」が着かないというメリットがあります。事業会社に売却をすると、「○○のグループになった」といった評判が出回り、取引先が嫌ったりする事例があります。ところが投資ファンドはどこのグループにも属していませんので独立を保つことができます。