「M&A2.0」成長とビジョンを実現するためのM&Aの時代

こちらは、幻冬舎オンラインに12月18日に掲載された記事を再編集したものです。

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M&Aの新潮流=ビジョン・戦略実現型M&A

 

 これまで中堅・中小企業のM&Aと言えば、事業承継のためのM&Aであったり、業界再編の中で規模拡大のために行われるM&Aがほとんどでした。

 

 確かに、日本の後継者不在率は50%となっており、若年層の増加から、後継者不足は今後も深刻なものであることは純然たる事実です。レコフ社の調査では2016年に公表された2400件のM&Aの成約件数のうち約300件が事業承継型と言われています。この数値は2015年に対して20%増加していることからも重要性が見て取れます。

 

 また、人口減少によって市場のパイが縮小していく中では、業界再編も必然的なものであり、今後も市場が成熟期に入る業界では業界再編型のM&Aは主流になっていくと推測されます。日本企業がグローバルな競争相手を買収するクロスボーダー案件(IN-OUT)の件数も2016年は前年比で13.4%も増加しています。

 

 しかし、私はM&Aの意義は「事業承継型のM&A」「業界再編型のM&A」という側面だけではなく(それも非常に重要な側面なのですが)、会社のビジョンの実現や従業員のさらなる活躍の場を広げることなど、多様な側面があると考えております。 

 

 特に我々は創業10年以内の会社経営者の方々からM&Aでの譲渡のご相談をお受けすることが近年多くなっています。彼らにM&Aの目的についてヒアリングをしていくと、M&Aの目的は事業承継型や業界再編といったものではないことがほとんどです。

 

 自社がより資金力のある大きな会社であるとか、より技術力・サービス力のある会社と一緒になることで、①自社の本業をよりスピーディに展開する②新しい事業を立ち上げるきっかけにする③グローバル化を進める④優秀な人材にアクセスするという4つの側面が重視されているのが現状です。

 つまり、更に事業を積極的に行う手段の1つとしてより大きな企業と組みたいというビジョン・戦略実現型のM&Aが最近の経営者のトレンドになっているということになります。

 

これを我々はこれまでのM&Aの形とは異なる、「M&A2.0」 と名付け、会社の戦略やビジョンを実現するための新しいM&Aとして提唱を行っております。

 

ビジョン・戦略実現型M&Aの4つのパターン

 では先述の4つの側面について、具体的な経営者のニーズを読み解くことにしましょう。

 

①自社の本業のスピードアップ:

 これがビジョン・戦略実現型一番多い理由です。比較的若い企業では、積極的に事業展開をしていくための資金力(社長の信用力)にそもそもの限界があったり、エリアを拡大をしようと思っても、見知らぬ土地ではゼロから場所をリサーチし、そこから不動産を借り、店舗や事務所を構築し、ということをやっていく時間がなかったりしています。そのため、資本力や他店舗展開、複数エリア展開をしている企業と組むことで、自社の行いたいサービス、つまり自社のビジョンをよりスピーディーに行うことを目的としているのです。

 

②新規事業の立ち上げ

 本業はしっかりと成長をしたが、ここからもう一段階の成長を目指すとなると、自社単独ではなく、大手と共に新規事業を立ち上げたり、自社の前後のバリューチェーンへと事業を拡大することで成長を目指していくこともある。大手企業としても単独で新規事業を立ち上げるより、これまで成長を遂げてきた企業の立ち上げスキルを学ぶことで、より成功確率を上げたいというニーズがあるため、この理由も増加傾向にあります。

 

グローバル化

 大手企業では築き上げてきた豊富なネットワークも、中堅・中小企業には十分ではないケースが多くなっています。特にB2C向けのサービスであれば、海外展開をするために自社の店舗やサービスを海外まで持っていかなければならないことがほとんどだが、これが難しい。大手企業のネットワークを活用することで、自社のサービスをもっとグローバルに展開したいという事例も今後は増加していくと考えられます。

 

④優秀な人材へのアクセス

 ITサービスを中心に、WEBエンジニアやWEBマーケターなどの重要なポジションが

なかなか採用できないという悩みがどこの企業からも聞こえてきます。その場合に、ブランド力があり人材のリソースが比較的豊富な大手企業を活用し、より効率的に採用をしていきたいというニーズも2016年ごろから非常に多く聞こえてきます。

 

 次回は「事業承継型」「業界再編型」の紹介と比較しながら、「ビジョン・戦略実現型」のM&Aについての展開や事例をご紹介していきます。

 

森経営コンサルティング

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