【2018年版】物流・運送業界の業界動向とM&A

巨大な物流業界は大企業がシェア50%を占める市場

物流業界は全体で20兆円の市場規模があり、日本を代表する大市場である。GDP総額で5%弱にものぼり、近年のEC市場の発達と温度管理・商品流通の技術改善と共に、更なる市場拡大が見込まれています。

 

物流の中でも、3つの業界が大きな地位を占めています。それが、海運・フォワーディング業界、トラック運送業界、倉庫業界の3つの業界です。

海運・フォーワーディング業界は市場規模が6.8兆円と大規模なものになっていますが、大手の寡占化が強いのが特徴です。1兆円を超える規模の企業が日本郵船商船三井川崎汽船と3社あり、1000億円を超える規模の企業がNSユナイテッド海運JFE物流、近鉄エクスプレス、郵船ロジスティクス日本通運の5社存在しています。

トラック運送業界は、一般貨物、特定貨物、軽貨物、宅急便、納品代行、引っ越し事業の6つの合計であすが、9兆円規模です。ヤマト運輸の売上が唯一1兆円を超えている規模ですが、1000億円を超える企業が11社は佐川急便、日本通運日立物流、セイノーHDなどです。

倉庫業界は、2.6兆円規模で100億円規模の企業が14社あるだけで、まだ大きく寡占化された状況ではありません。今後、倉庫業界では海運・フォワーディング業界やトラック運送業界のようにM&Aによる集約化が進むと考えられます。

 

物流業界の課題はワンストップと人材確保

物流業界の近年の大テーマは、市場拡大と共に複雑化するニーズに対応するためのワンストップサービスの提供と、人材確保です。

ワンストップサービスの提供については、矢野経済研究所の「物流市場の現状と将来展望2017年版」を見ることで、その重要性が分かります。物流の業界の17業種のうち、最も市場が成長しているのが、トラック運送事業と倉庫事業の2つです。トラック運送事業は5年間で25%、倉庫事業は20%近く成長を遂げています。また、宅急便市場についても、5年間で6%強成長をしています。更には、システム物流など複雑な運送サービスが求められるようになっており、M&Aも多発しています。

人材確保の課題についてはニュースにもなっている通り、トラック運送業界、特に宅配便業界で課題となっています。現在では、各世帯が5日に1回は宅配便を受け取るようになっています。国土交通省のデータによると、平成24年度から平成28年度までの間に5億個の宅配便が増えています。10年前と比較すると、ほぼ倍増という成長度合いです。一方でトラック運送会社数は、再編著しい調剤薬局業界を超える、6万3000店舗あり、その99.9%が300人以下の中小企業であるため、まさに今後は再編が予想されます。

 

大手企業がノンコアの物流部門を切り離しへ

このような業界の中で物流部門はこれまで以上に付加価値とスピードが求められるようになっており、従来より自社で物流部門を抱えていたアパレルやメーカーがノンコア事業である物流部門の切り離し(カーブアウト)を増加させています。

大手企業では2014年にJSRが日本トラスティに子会社の物流部門をカーブアウトし、2015年にはソニーが子会社を三井倉庫ホールディングスに売却。アシックスも同様に丸紅に売却をしています。2016年にアパレルのオンワードホールディングスもセンコーに子会社を売却しています。2017年には協和発酵キリン、JX金属、千趣会が同じく物流部門の切り離しを行っています。

 

中小のトラック運送企業も高ニーズ

先程述べたように、中小のトラック運送企業は小規模企業がほとんどです。中小企業から独立し、従業員5名という運送会社も多くなっています。このような企業では、大手の孫会社や曾孫会社からの下請け構造で仕事をしていることがほとんどです。しかしながら、運送量の増加と人手不足から仕事が回らない中堅企業が増加しています。最近では、ママさん世代に個配を以来したりするシェアリングサービスが人気を博しており、大手企業が投資をしています。

M&Aをしている中堅規模の運送会社に彼らのニーズを聞いてみると、これまで仕事を外部に委託していた企業をM&Aすることで、安定的に自社の運送を行いたいというのが最も強いニーズになっています。特に配達ニーズの強い都内においては、債務超過の企業でも十分にM&Aで売却が可能な環境になっています。

今後も市場が拡大の中で人手不足の課題は大きくなっていくと考えられており、中小の運送企業のM&Aも加速していくことが予測されています。

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