【2018年版】建築・建設業界の業界構造とM&A

人手不足の休廃業・解散が増加

建設業界の市場規模は建設投資額をベースにすると、50兆円と言われています。この数字は、1992年のバブル崩壊時に84兆円あった時点から比較すると3分の2程度まで減少したといえますが、リーマンショック直後の2010年の42兆円から比較すると回復傾向にあると言えます。それに伴って、大手4社が過去最高益を更新するまでになっています。

しかしながら、東北大震災に関わる建設ラッシュに加え、東京五輪に向けた建設ラッシュが合わさり、人材不足が大きく課題となっています。更には昨今の好景気によって建設業の就労人口は150万人程度減少しており、人材不足に拍車をかけていると言えます。

実際に人材不足の解消のためのM&Aが増加しています。人材面でのM&Aのメリットとしては、リーダー層を含めた複数の人材を大手から迎え入れることができる点と異なる業種や専門性を持つ人材を確保することができる点、大手の信用度によって採用力が高まる点、処遇や福利厚生・キャリアアップ等多岐にわたります。

実際に、建設業とメーカーであるコニシと角丸建設。設備工事業とビルメンテナンス業である高砂熱学工業と丸誠。警備業と設備工事業であるセコムとイートラストといったM&Aが実現しています。

 

M&Aリーマンショック前まで回復

建設業のM&Aの件数はリーマンショック後5年間、毎年連続で前年を上回る水準で推移しています。2017年は上期で46件の成約が公表されており、これはリーマンショック後の最高値を更新する水準です。

建設業の中でも維持修繕工事は市場の拡大にともなって、M&Aも増加しています。維持修繕工事は新規工事とは異なり、ストック型のビジネスであること、旧耐震を含めた建築物・道路等のインフラの維持・修繕にニーズがあることもあり、これらの業務を外注していた企業が内製化を図りたいというニーズでM&Aをしていることが多くなっています。

更に業種を見ていくと、「土木・建設」では住宅建材卸業のOCHIホールディングス、通信工事のコムシスホールディングス、造船の今治造船、建材製造のコニシなど異業種からM&Aによって参入する企業が増加していることがトピックとして挙げられます。

「ビルメンテナンス業界」では、市場性の拡大は見込めないものの、安定した収益を確保できること及び競合への乗り換え可能性が低い業界のために、隣接業界の企業がM&Aによって参入するケースが増加しています。最大手のイオンディライトを中心に、M&Aが増加しています。イオンディライトはオペレーション領域からオフィスレイアウトやエネルギーマネジメントといったマネジメント領域へと業務を拡大していっています。

「不動産管理業界」では、調剤薬局業界の業界再編と同様に、大手の市場シェアが非常に低いため、大手による中小のM&Aが進んでいっています。2016年の大手10社の管理戸数シェアは32%となっており、最大手の大東建託でも8%と低水準です。今後不動産管理業会では、調剤薬局の業界再編のように、大手が中小をM&Aする次代を経て、大手が中堅をM&Aする次代へと5年ほど掛けて変化していくことが推測されます。