2017年の公表M&Aは業界再編対象が増加

 2017年の飲食業の公表M&A件数(少数株主持分取得を含む)は20件となりました。飲食業界は小規模(時価総額1~30億円)のM&A案件が多いため、公表案件は少ないものが特徴です。

 

 2017年の特徴としては、スシロー・グローバル・ホールディングスによる元気寿司の買収を筆頭に、業界再編を迫るM&A案件が多数見られました。

 

 下記にて、著名なM&A案件について取り上げてみたいと思います。

 

  1. スシロー・グローバル・ホールディングスによる元気寿司に対する買収(TOB)

元気寿司は業界4位の回転寿司企業です。元気寿司は2014年まではかっぱ寿司を経営する、カッパ・クリエイトホールディングスとの業務提携をしていましたが、2015年にコメブランドで著名な神明がTOBで傘下にしていました。

今回の譲渡対価は226.19億円(取得時の株式価値と同等)で、100%株式譲渡となっています。

 

  1. チムニーによるマルシェ(八剣伝/酔虎伝)の少数株主持分の買収

マルシェは東証一部に上場する、「八剣伝」や「酔虎伝」などで有名な居酒屋・バーチェーンです。本社は大阪府にあり、関西・東海地方での店舗展開が多い企業です。売上は88億円、純利益が1億円で経営効率化を行っている最中での買収が発表されました。

チムニーは「はなの舞」に代表される鮮魚系の居酒屋チェーンであり、酒類専門店やまやの子会社となっています。株式取得時の株式価値は70.56億円で取得価額は7.9億円にて11.20%を谷垣忠成氏ら株主から取得しています。

 

  1. サントリーによる鳥貴族社長大倉忠司氏の株式持ち分の引受

サントリーは鳥貴族の創業者の大倉忠司氏から個人の株式を20万株、1.72%を取得しました。取得価格は4.65億円、100%換算270億円(株式価値と同額)となっています。売却後の大倉忠司氏の持ち分は23.4%で大株主のままです。鳥貴族にはサントリーのビールがメインで置かれているため、サントリーは鳥貴族の株式を保有し、戦略的に鳥貴族との関係性を構築したいのではないかと考えられます。

 

4.三井不動産による上野精養軒の株式取得

  不動産の大手ディベロッパーの三井不動産は、上野にある老舗フランス料理店を経営する上野精養軒の株式の15.90%を11.13億円で取得しました。上野精養軒の売上は30億円であり、当期純利益は△0.1億円となっています。公表データによると、直近4年間は売上は横ばい水準になっており、利益水準も低く、店舗数も多くないことから、三井不動産がどのように株式価値を向上させるのかが課題になっています。 

2017年飲食業の公表M&A件数は20件。未公表の案件が多数。